天下の回りもの

サプライチェーンの一部を担って、新たな価値を生む、新たな社会・業界を作るとしよう。
その場合、当然のように様々なプレーヤーと一緒にその実現に向かっていく必要がある。
でも、その社会や業界が革新的であるほど、ゴールが見えにくく、右往左往する。
そんな時は、ゴールの姿を全員で共有して迷わず進んでいくことがなによりも重要となる。

ただ、革新的な社会は、ある程度のイメージを持てても、すぐにこれだと言い切れるものはない。
故に、もう少し具体が固まったら話をしよう。どうしてもこんな状況に陥ることが多い。
つまり、一定の期間、対話は行われず、それぞれがそれぞれのやり方で、ゴールに挑むことになる。
その結果、ある程度固まった未来を持ち寄ると、バラバラな未来が集まってしまうことも多い。

ピラミッド型のサプライチェーンの場合はリーダーがいる。リーダーがゴールの姿をつくる。
リーダーがゴールの姿のシナリオを持ち、必要な部分だけをそれぞれのプレーヤーに開示する。
各プレーヤーは開示された情報と依頼内容に基づいて、創意工夫を始める。でも全体は見えない。
リーダーは各プレーヤーから成果を集めて、組み合わせで新たな社会や業界を作り上げるのだ。

ほんの10年くらい前までは、日本ではこんなやり方で社会や業界の変革が行われてきたと思う。
でも、非連続な変革、より広い社会を対象とする場合は、このやり方は通じないことが分かってきた。
ゴールの姿をリーダー1社が描き切ることができなくなってきたのだ。エコシステムの登場だ。
一番の違いは、先導するプレーヤーはいたとしても、エコシステム内には序列がないことだ。

さらに、各プレーヤーは自らがイメージするゴールの姿を初期の段階から持ち寄り、対話を始める。
その過程を通して、様々なアイディアが集まり、みんなのありたい姿としてのゴールが作られていく。
最初は解像度の低い想いから始まり、対話の度に具体度が高まる。情報の整理も進みリスクも減る。
お金は天下の回りもの。守秘や自社収益という壁を超えて対話を続ける。この感覚が大事だと思う。