ヒトの流れのデザイン

街に賑わいを生みたい。多くの人が街に訪れ、街に活気が溢れ、経済も回っていく。
こんな姿を実現したいと思う人たちは数多くいると思う。私も常にそう思っている。
賑わいを生み出した例は至る所にある。特に今の旬のテーマを捉えたイベントは人が集まる。
場合によっては密になってしまうほど集まりすぎてしまうことすらあるのではないだろうか。

こうしたイベントでの賑わいも確かに嬉しいが、どうしても反動が大きく持続しにくい。
幾つかのイベントで一つひとつバラバラに集客していっても消耗感がどうしてもつきまとう。
やはり、もっと塊感のある持続的な仕掛けで、人の心の占有率を高めていきたいと思う。
また行きたくなる、また行かなければをデザインしたくなる。能動的にリピート来訪して欲しい。

田圃アートは田圃に7色の稲穂でアートを描く取り組みだが、随所に素晴らしい仕掛けがある。
実りの秋にアートは完成する。これまではなんの変哲もなかった田圃にアートが出現する。
なんともインスタ映えするシーンだ。この噂を聞いた人々が次々に現場を訪れる。かなりの人数だ。
でもこれだけでは終わらない。1年を通じて色々な取り組みが仕込まれ、人を呼び続けている。

まずは田植えだ。7色の稲穂になる苗を植えるイベントを開催している。自分の植えた苗になるのだ。
成長が楽しみで仕方なくなる。肥料をあげたり、天候を心配したり、頭の中に苗が入り込んでくる。
ある時から有料の展望台も作ったという。田圃に訪れた時にアートを確認できるようになった。
何度も訪れる。アートの完成を祝うイベントでは、撮影会や地のものを使った食事会も開かれる。

次はいよいよ刈り取りだ。もったいない想いもありながら、収穫の時を迎える。自分の手で収穫だ。
その後は精米の工程も学び、新米おにぎりの試食会へと続く。自分が手塩にかけて育ててきた米だ。
勿論、お土産のお米もある。他には稲藁を土壌改良の堆肥として来訪者は家庭菜園で使っている。
1年中、心は田圃アートと共にいる。ヒトの持続的な流れが生まれている。色々デザインしてみたい。