昨日、ある方のご好意で伝統的な織物の12代目の方とお会いすることができた。
待ち合わせで指定された建物の外観はモダンだが、とても温かみのある印象を受けた。
建物に入ると、抑え目の明かりの中、鞄、ソファー、アートなどが整然と並んでいた。
一目で見て、丁寧な仕事によって生み出された逸品だと分かる。気持ちが引き締まる思いだ。
お会いするまで少し時間があった。外壁と同じ素材で仕切られた落ち着く空間に案内された。
シンプルなデザインで装飾などもなかったが、自然と心が落ち着く場所だった。
雰囲気のある器で冷たいお茶を頂いた。今まで飲んできたお茶とは異なり、味わいがとても深かった。
グッと飲み干すようなものではなく、少しずつ口に含んで、味を噛み締めながら飲んだ。
しばらくすると、12代目が部屋に来られた。目の奥で何かを常に追い求めているような方だった。
まず印象に残ったのは、この織物が一人の職人の手では完成しない織物だという言葉だった。
たくさんの工程があり、技を磨き上げたそれぞれの工程の職人が1つの織物を手がけていく。
同じ工程の職人でも特徴は出るという。組み合わせによる作品の奥行きを感じてみたいと思った。
最初に目に入った建物の外観にもこだわりがあった。外観の黒は炭を混ぜた漆喰だという。
何人かの職人であつらえたもので、塗りのストロークの違いなどが現れているという。
石や砂のような壁はよく見ると4層になっていた。京都の4ヶ所の土を原料にしているという。
焼き固めたのかどうかは分からないが、自然から生み出される色にはなんとも言えない味わいがある。
2階のギャラリーには驚いた。織物に最先端の材料が織り込まれていた。例えば温度を感じる素材だ。
25度以上になると色が変わる。温度を可視化する技術だ。新たなコミュニケーションに使える。
電流を流すと光る素材も織り込まれていた。光り方を制御すれば織物がディスプレイになる。
温水で硬化する樹脂もあった。水中でゆらめく織物の一瞬を切り取ることができる。未来があった。