ドイツにいる頃、面白い地名だと感じた場所だ。はじめは一瞬怖い森なのかと思った。
どうやらトウヒの木が生い茂り、暗く見えることから名前がついたらしい。深く濃い緑だ。
北は温浴施設のあるバーデンバーデン。東はベンツやポルシェのあるシュトゥットガルト。
ドライブコースにももってこいの場所だった。自然に囲まれる感じがとても良かった。
戦後、一度は酸性雨の被害で、多くの木々が枯れてしまったが、その後保護活動が活発化した。
80%の木はトウヒかモミだ。トウヒは別名、アカモミとも呼ばれているらしい。
要はクリスマスツリーに使われる木だ。クリスマスマルクトの荘厳な雰囲気はここからくる。
ドイツの人たちにとって、とても大事な森になっているのだと感じる。また訪ねてみたい。
話は変わるが、10年以上前にドイツ車を購入した。色は深い緑だ。タンネングリュン。
意味は「もみの木の緑」だ。その事実を知った時、とても豊かな気持ちになったのを覚えている。
その色への名前の付け方に、文化を感じたし、その名前の色のついた車を持つことが誇らしかった。
一般名の深緑だったら、背景のストーリーはない。タンネングリュンが愛着を何十倍にもしてくれる。
車を走らせると、曇り空の下では、黒に近い緑に見える。ひとたび日光を浴びるとガラッと変わる。
キラキラと深みのある緑がぐっと前に出てくるのだ。思わず、ドイツの黒い森の表情が目に浮かぶ。
33年前の車だが、まだ輝きを放ってくれる。走る曲がる止まるにも全く問題がない。
ドイツのものづくりに敬意を表しながら、これからも大事に、文化を乗せて走っていこうと思う。
またもや話は変わるが、いま内燃機関最後のマニュアル車の購入を検討している。最新のドイツ車だ。
カタログをめくっていると、ボディカラーのカスタムペイントができるのが目に入った。
最新の車にタンネングリュンを纏わせることができるのに気づいてしまった。2台並べたい。
すごい衝動に駆られている。意思決定までにはまだ少し時間がある。文化を紐解きながら考えてみる。