価値を割り付ける

「駆け抜ける喜び」をブランドメッセージとして発信して消費者を魅了している会社がある。
車好きなら分かると思う。BMWだ。車に乗ると、確かに「駆け抜ける喜び」を感じる。
加速感、操作感など、心地よさを擽るポイントが無数にある。次々にそしていつでも感じる。
「駆け抜ける喜び」の体感のために、様々な部品や機能が協調するように設計されているのだ。

更に驚きなのは、「駆け抜ける喜び」は車自体の設計に留まらない。売り方でも表現する。
有名なのは、ショールームに置いてある車の置き方だ。展示車は道路と並行に並べてある。
通常、車はフロントマスクが見えるように展示されることが多いが、道路と並行で動きを表す。
各種イベントやノベルティでも常に「駆け抜ける喜び」を強く意識した企画がなされている。

プレミアムブランドは、独自のメッセージを日常で体感し続けてもらうように知恵を絞る。
「駆け抜ける喜び」を、車に、各部品に、販売店に、SNSに、ホテルに割り付けていく。
世界観の生み出し、その価値に共感する消費者を沢山生み出し、モノ売りを超える対価を頂く。
「駆け抜ける喜び」が迷わぬ事業活動を支え、高収益ビジネスの実現を担っているのだ。

ふと思う。ブランディングの「メッセージを割り付ける手法」はアーキテクチャに似ている。
特に、ものづくりの範疇を超えて、ものを使ったコトづくりをする場合には酷似する。
「駆け抜ける喜び」を幾つかの要素に分解して、各要素に貢献できる具体手法を沢山つくる。
その選択肢の中から、費用対効果が最大になる具体手法の組み合わせを選び、世界観を作る。

これはアーキテクチャで規定した価値、例えばBMWらしさ起点のものづくりそのものだ。
らしさを様々なモデルで実現できるように、モジュールとその組み合わせ・繋ぎ方を規定する。
アーキテクチャは、MaaS企業が協調して使う機能を揃えることにももちろん役立つ。
でも、意思をもったアーキテクチャで世界観を体現することがもっと大事だとつくづく思う。