伝える

20年近く前、必死のコミュニケーションという言葉をある大企業に教えて頂いた。
単なるコミュニケーションでは足りないもんだ。絶対に伝わらない。必死にならないといけないと。
もちろん、定義がしっかりしていて、既に色々な人が実践しているものなら、必死さはいらない。
既に共通認識となっているものであれば、その言葉や記号を使えば正確に意図が伝わるからだ。

でも、方法を変える、新しいことをやる。こうした挑戦をする際には伝わることが稀と思う方がいい。
これまでの常識には含まれていないことはもちろん、異なる解釈、違う組み合わせでも違和感が生じる。
伝えている本人は、その時までに時間をかけて考え、良い構想、提案になっていると信じている。
だからぶつかる。受け手は「あの人、変なことを言い出した」と、伝え手は「何も考えていない」と感じる。

ここで諦めないのが必死のコミュニケーションだ。まずは違和感の源を探る。ジャブを打ってみる。
話を聞くジャブだ。「そっか、そうだよね」。あくまでも違和感に同意、「そうなるよね」だ。
違和感が掴めたらこっちのもの。その引っ掛かりさえ取り除ければ、次に進める。話が進む。
ここで伝えたい最も大事な内容は死守すべきだが、枝葉は臨機応変に修正して対話を盛り上げる。

色々と枝葉を組み替えていけば、対話、やりとりが成立してくる。そこまできたら一番大事な本題だ。
枝葉の対話で和んだところに、「面白いね」と言われるように本題を表現を変えて投げ込む。
興味を持ってくれたら十分。そんな気持ちでゆとりを持って対話をしていく。急がない。
徐々に、大事な本題をどうやったら実現できそうかを一緒に考え始める。アイディアを足していく。

伝えるということ。これは表裏一体だ。相手に「伝わった」があると、こちらの「伝える」が生まれやすい。
内容が新しければ新しいほど、一方的ではなく、先に相手に「伝わった」という気持ちを生むことが大事だ。
もう一つ大事なのは日々の場作りだ。常に発信して、聞き回ること。常に挑戦しているポジションを取ること。
伝えたいことが普遍で本質的であることも効く。 あーでも、伝えるってほんとに難しい、それが本音だ。