舞台としての店舗

例えば、薬を売っている店舗は多様だ。品揃え、店舗の形態、在庫の持ち方など大きく異なる。
一番メジャーなのは、なんでも売ってるドラッグストア。チェーン展開している企業が沢山ある。
数は少なくなってきたが、商店街や街中には昔ながらの薬局もある。
掛かりつけの薬局を目指した、病院で処方された薬を専門に扱う調剤薬局もある。

会社には置き薬がある。救急箱の中に風邪や腹痛など身近な症状を緩和できる薬が入っている。
インターネット通販でも買える。薬剤師からの遠隔アドバイスを受ければ大体の薬が揃う。
薬だけではあまり見かけないが移動店舗もある。欲しい薬だけでなく、店がやってくる。
特定の商品だけだが自動販売機もある。

品揃えの少ない小さい店舗の商圏は狭い。置き薬はオフィスの従業員。街の薬局は周辺住民。
ドラッグストアは繁華街に来る昼間の人口と夜の人口。インターネットは翌日配送のエリア。
移動店舗は移動コストと販売量でエリアが決まる。自動販売機はそこを通る人専用だ。
顧客数、顧客の求める商品やその頻度から、どの店舗が経済的に成立するかが見えてくる。

コロナ禍で今起きていることは、移動の減少。それに伴うついで買いや衝動買いの減少だ。
単に店舗ポートフォリオを見直してもどうにもなりそうにない。
病院に行く人が減り、ドラッグストアに行く人が減り、必需品が多い薬でも売上が減った。
回復には、便利さだけでなく、欲しいという感情を湧き起こすきっかけが必要だ。

売り方をアップデートしたい。需要を喚起する工夫を詰め込んでアップデートしたい。
商材別でなく、生活に必要なもの、役立つもの、豊かさを生むものという括りで考え直したい。
クリックだけに頼らず、人との交わりの中で買い物を楽しむ店舗。楽しんだ経験を販売する店舗。
それを聞いた人が楽しむ店舗。みんなが売り手にも買い手にもなる。こんな舞台を生み出したい。