光の散乱と透過の魔法

感動的な技に出会った。空間に「うつろい」を生み出す。
2.7m*2.1mという大型の和紙が魔法の仕掛けだ。
和紙といっても単なる和紙ではない。おそらく何100工程にも亘る匠の技が詰まっている。
もちろん職人の手による紙漉きだが、何層にも重なった和紙の作品だ。

最表面と最裏面は通常の和紙。
それらに挟まれる層には自然素材や粉状の金属など自在だ。
顔料と共に漉けば色もつけられる。水を叩きつけて、光を通す風合いのある穴も開けられる。
層は最大で7層だ。ただし、その厚みは合計でも1mmに満たないという。

理由は簡単だ。まずフロントライトを当てると、最表面の和紙が光を散乱する。
ひとつ目の表情だ。中間層にある素材、例えば銀粉ならマットな感じな優しい輝きを感じる。
フロントライトを消し、バックライトをつけると、銀の部分だけ光を遮り、そこだけ黒くなる。
場所場所の銀粉の量に応じて濃淡がついている。マットな銀からグレー&黒へと「うつろう」。

中間層に何色もの自然な色柄をつけた作品にも圧倒された。
フロントライトでは、うっすらと模様がわかる程度で、ナチュラルな感じだ。
バックライトを照らすと、力強い色彩が浮かび上がってくる。コントラストは圧倒的だ。
なにか空間が勇気や力を与えてくれるような感覚に包まれる。

薄くて軽くて大きい和紙の作品。既に至る所で建築の内外装に使われている。
風が吹くとはためく。ならば薄くてもはためかない穴の空いた作品をつくり、風を通す。
大きいと端が丸まる。ならばアルミ材を中間層に挟む。上品にピンと張った作品になる。
挑戦する。新たな課題が見える。乗り越える。技術が生まれる。深みのある凝縮した時間だった。