作り込みと切り出し

新しい事業を生み出す時、届けたい新たな価値をより大きくしたいという感覚がある。
例えば、女性や高齢者でも働ける現場を作りたいという想いがあったとしよう。
まずは筋力に頼る業務がないこと、それから男臭くない職場環境を徹底したいと考える。
それを実現するためには、たくさんのやることが頭に浮かぶ。何から何まで完璧に揃えたくなる。

あれこれ色々考えるのはとても楽しい。一つずつ形にしていくのもまた楽しい。
色々な製品やサービスが揃った時の職場の姿を想像すると、それだけでもワクワクしてくる。
次第に、完璧な構想を求め始め、実装の手が動きにくくなる。販売でなく研究開発が続くのだ。
想いの実現に向けて突き詰めるのはもちろん大事だが、事業としての成立性は低くなっていく。

こうした状況を避けるには、「作り込みと切り出し」が大事だ。常に行ったり来たりするのが良い。
切り出して単体の製品やサービスとして販売できないだろうか。直近で売上になるサービスはないか。
本来使おうとしていたシーンでないところであっても、使ってくれる場所はないだろうか。
切り出したものを一緒に売りたい人はいないか。一気に視野を広げて、様々な販売可能性を紡ぎ出す。

切り出しのプロセスを一度やると、製品やサービスの汎用性に対しての感覚が養われる。
想い専用の製品やサービスではなく、他にも使える製品・サービスになるのだ。
事業の成立性が高まり、資金繰りも楽になる。ここまで来たらまた作り込みに戻ればいい。
リフレッシュされた頭で、もう一度改めて足りないもの、想いの実現の展開ステップを考える。

没頭すると、どうしても細部の詰めに行きがちだ。作り込みと切り出しを往復すると明らかに変わる。
頭が一度リセットされ、想いの全体像を俯瞰できるようになる。冷静に相対比較もできる。
切り出しの中では、小さな成功も味わえる。これもモチベーションを上げる上で重要だ。
想いを構成する製品・サービス群。切り出されたたくさんの脇役たち。こんな事業は強いと思う。