作品。

少し前まで長い間、コンサルティングという世界に身を置いていた。四半世紀だ。
その中で製造業が多かったが様々な産業で、色々なテーマに取り組んできた。
正直、取り組む時にその業界の常識を知っている時と、そうでない時があったと思う。
ただ、知らないとできないと思ったことは多くの場合になかったと感じている。

もちろん、ベンチマーキング調査のように調べることが仕事だと難しくはなる。
基本的なことも含めて調べる必要があるので、調査の工数が明らかに膨らんでいく。
でも、調査の先にやりたいことを見出すのが仕事であれば、意外と常識はない方が良い。
顧客のためにできて、追加の対価をもらえることを探すのなら尚更だ。

そして、価値のデザインになると、もはやゴールは一つではなくなる。無数と言っても良い。
何を仮説にして、どう検証して、何を選ぶかが大事になる。非連続な変化を作るからだ。
そういえば、当時、いまでもだが、なぜその仮説が生まれたのかと聞かれることが多い。
自分でも明確には分からないが、重要な点は本質に立ち返ること、意思を持つことだ。

あ、これは最近携っているアーツの領域とも重なることがある気がしてきた。
アーティスはどんなものを作ってもいいが、自分の意思を世の中に発信していく。
まあ、デザイナーとは違って、外から内ではなく、内から外が表現の中心だ。
でも、何か拠り所を持って、こだわりを持った作品を生み出しているのは間違いない。

振り返ると、コンサルティングの世界で、作品を作っていたような気がしてきた。
仮説の段階では、自分はある意味アーティストだ。敢えて、ロジカルなアーティストだ。
クライアントとの共創は、デザイナーの側面を出しながら、作品を紡いでいく。
やはり、人の営みはどんな世界も作品作りだ。それが人にとって楽しく魅力的なのだと思う。