以前、モーターショーに出たことがある。その時、即席のチームが生まれた。
即席といっても、悪い意味ではない。4ヶ月という短い時間の中で成果を出したチームだ。
目標はとても分かりやすいものだった。新たな価値をモーターショーでお披露目する。
外出困難者が遠隔操作でゆっくり走らせるEVで、温かみのある移動を生み出すものだ。
目標を象徴する絵もあった。想いを一つにする力のある絵だった。常にその絵が頭にあった。
ある意味無謀とも思われた出展だが、それぞれが自律的に課題を乗り越えていったのだ。
このチームの特徴は、指示命令系統がないことだった。一人のリーダーがいたわけではない。
課題はたくさんあったが、課題ごとに突破する力を持つ人が入れ替わりながらリードした。
これは確かにモーターショーという舞台で特殊な環境でのチーム組成だったと思う。
でも、ゴールが明確にイメージできること。そのゴールに想いが込められていること。
それが大きな成果を生み出せた要因だ。その想いに共感した人が集まったのだった。
そして、それぞれの持つ力、できることをそれぞれが見出し、リスペクトした。
全体を見るととても時間がなかった。ベース車両はあったものの、ほぼゼロからEVを作ったのだ。
ショーのオープニングに間に合わなかったら残念すぎる。一人で達成することなどあり得なかった。
チームの力、力の総量の最大化が必要だった。その上でゴールを見据えて最短距離で進んだ。
ここは自分がなんとかする、ここはあの人に任せる領域。あそこの漏れは共同でなんとかする。
それぞれのできることを集めて、力の総量を増大させていった感じだ。全員が全体も見ていた。
ここは自分がこだわりを持ってやり切るところ。全員が有機的に、能動的に動いていたと思う。
既にある価値を効率的に届ける場合と、新たな価値を紡ぐ場合ではやり方が大きく異なる。
後者の場合、想いのあるゴールと、最短距離と能力総量の最大化が成功の鍵だと思う。