品質を考える。

何か商品やサービスを作り上げようとする際、常に品質を意識する必要がある。
では、品質とは一体どんなものだろうか。辞書を引くと意外な答えがあった。
(良・不良が問題になる)品物の性質だ。確かに品質なのだから品物の性質だろう。
そこに、良・不良が問題になるという形容詞がついている。問題になるがポイントだろう。

要はその品物を受け取った側が、どう受け止めたか。問題として捉えたかが大事なのだ。
品質が高いというのは期待以上の品物だったということだ。それ相応の品物もある。
一方で、品質が低いという場合もある。これは期待していたレベルには届いていない状態だ。
ということは、受け手の期待値と実際の体験とのギャップが品質マネジメントの対象だ。

これはある意味ややこしい。これまで売っていたものに類するものなら期待値は明確だ。
受け手は値段とのバランスで期待値を定める。故に、その期待値を品質要件に落とし込みやすい。
一方で、この世に市場が確立していないもの、あっても使い方が明らかに異なるものもある。
その場合は、期待値は未知数だ。よって、期待値の設定やコントロールから始める必要がある。

新しいものでも、受け手が連想する既存のものがある。それを手掛かりに期待値を推測する。
でも、バッチっとこの仕様でこれだけの性能を持てばいいと、言い切るのは難易度が高い。
さらに、まだ売れていないものはそもそもどんな用途で誰が使ってくれるかもわからないのだ。
その結果、何とどう比較すべきかもなかなか定まらない。モデルチェンジの品質とは大きく異なる。

ふと、思った。ここ10年の品質業務は意外と楽だったのかもしれないと。品質は決まり易かった。
でもまだものがあまりない時代は、全ては今ないものだった。品質とは製品の定義そのものだった。
大胆さも必要だし、潜在顧客との対話も必要だった。ゼロイチの世界の仕事だったのだ。
新たなものとして驚きを生む。その後にバージョンアップする。こんなやり方もあるかもしれない。