需要の単位

以前からものづくりでは、大量生産から多品種少量生産へという流れがあった。
とっておきの商品を作って、人気が出たら、みんながこぞって購入した時代が大量生産だ。
でも、みんな同じものを持ち始めたら、自分に合ったアレンジや仕様のものが欲しくなってきた。
数量限定品や色違い、デザイン違い、装着オプション違いなど多品種少量が加速してきたのだ。

多様性を大事にする価値観の広がりもこの流れに拍車をかける。個性を尊重する感覚だ。
カスタマイズを自分でやったり、自分流アレンジのための工房を用意する小売店まで出てきた。
商品の新たな使い方の提案を消費者自身が行なったり、2つの商品を組み合わせて使ったりする。
こうした創意工夫を発信する場もある。Youtubeやインスタなどだ。いいねがつくと元気がでる。

ものづくりの民主化が始まっている。需要の単位がどんどん小さくなっている。1の場合すらある。
そうしたニーズに対応すべく、3Dプリンターの進化も止まらない。値段も安くなってきた。
3Dデータを作ってボタンを押す。少し時間はかかるが文字通り欲しいものを印刷してくれる。
素材樹脂ならだいぶ選べるようになってきた。まだまだ高いが金属でも印刷できるようになった。

ものづくりに限らず、需要の単位は小さくなっていると思う。移動や食事にも変化がある。
コロナ禍が一つの大きな原因だが、密を避けるために、一度に運んだり食べたりする人数が減る。
世の中のほとんどのサービスは、これから密な集団をなくすべく、多頻度少量への転換が必要だ。
モビリティであれば、定員をぐっと少なくして、ゆとりのあるキャビンでのサービスになる。

変えられないのは単価だ。移動自体、飲食自体の価値が大きく変わらなかったら据え置きが妥当だ。
ものづくりでもそうだが、多品種少量になったからとしても、突然単価を倍にはできない。
スケールアップで単価を下げる。常道だった。これからは、スケールダウンでも単価を変えないだ。
新たな創意工夫の方向はこれだ。リサイクル/リユースも含めた新たな常識を作っていきたい。