いま、世の中では地域に目を向けた様々な活動が始まっている。地方創生の話題を数多くみる。
コロナ禍、働き方改革、多様性、ベンチャーなど、大抵のキーワードに絡んでくるテーマだ。
一昔前なら地方の街は、よそ者を嫌う雰囲気があったようだが、最近は少し変わってきたと思う。
街の賑わいを作ろうとやってきたよそ者と協力して街を盛り立てている事例がたくさん出てきた。
共通して見えてくる姿勢は、活動対象が街であり住民であることだ。自分たちではない。
もう少し突っ込んで言うと、街の人たちが買い手ではなく、売り手になる取り組みを優先している。
街の人に、如何に儲けてもらうか。追加の収入が生まれるような仕掛けを考えている。
背景には、追加収入があればお金が使われ、売買が沢山おこり、街の経済が潤うという考えがある。
地方の街向けのサービスを作った。街の困っている課題を解消できる。さあ、売りに行こう。
一見、街の人のニーズにマッチして沢山売れるのでは、と考えてしまうが、そうはいかない。
往々にして、その課題があるのは、解決策がないのではなく、解決策に使うお金がない場合が多い。
もちろん、少しは売れる。なぜなら、少しの余裕のある人は必ず存在し、その人が買うからだ。
よそ者を嫌う雰囲気は、おそらく「よそ者は街の人のお金を持って出て行く」という感覚からくる。
良かれと思って売り込んだサービスが、少し余裕のある人に売れて一巡すると、売れ行きが鈍る。
事業の成長が見込まれなくなり、撤退を考えるようになる。そして撤退する。そうなると大変だ。
余裕のあった人のお金は減り、よそ者は事業に失敗して、街は使った補助金も回収できない。
地方創生の成功要因として、地方に住民として暮らすことがよく挙げられる。少し違和感がある。
同じ立場を理解することはとても大事だと思うが、もっと大事なことは住民に道具を用意すること。
お金を稼ぐ道具だ。街の人同士でその道具を使ってもいい。街の外の人に道具を使うのも大事だ。
地域に根付くとは、その街や住む人に供給者になってもらう道具を作ることだ。忘れてはいけない。