確率論を超える

300万の壊れ物を移送する。そんな仕事があったとしよう。どう向き合うか。
仮に1個百円でも移送費は3億円になる。付帯作業も入れるともっと膨らむ。
仕事の規模としては申し分ないだろう。ある意味魅力的と言ってもいい。
でも一抹の不安が頭をよぎると思う。壊れ物か。果たして事故はゼロにできるか。

客観的に見ると、どんな事故でも事故はある確率で起きてしまうものだ。
故に300万個もあれば恐らく事故の数件はあるのは間違いない。
そう考えるべきだ。そうなると、事故は起こしませんとは言い難い。
でも、事故はある確率で起きますと言ったら、仕事はとれなそうだ。

となると、多くの場合、こういう管理をするので万全です。事故は起こしませんとなる。
でも、頭ではゼロにはできないだろうとは思っている。でも根性でやり切ろう。
とはいえ、実際にやり始めると机上で描いた管理の方法は上手くいかなくなり、事故が起きる。
そもそも最初から壊れているものすら存在する。目に見えないヒビが入っていたものもある。

手にとって少し振動を与えた瞬間に割れた。そんなことも起きてしまう。事故はおきるのだ。
そのあとは責任問題に発展する。初めから割れていましたという業者と事故だという発注者。
どんどん険悪になる。そうなると単純なミスも発生し始める。やる気が減り気が緩むからだ。
そして事故が増える。ほらやっぱりやり方が悪かったんだと、業者に責任を押し付ける。

もう誰の責任かが問題になって、壊れ物を大事に扱うことが論点にならなくなる。
もっと言えば壊れ物の所有者へどう謝れば丸く収められるか、業者に謝らせることまで考える。
だれも嬉しくならない。発注者と業者がタッグを組み、所有者を巻き込んで壊れ物を大事に扱う。
不慮の事故に対しても大らかな心でご苦労さまと言える関係を作る。そんな姿が理想だと思う。