険しい道を切り開く

日本の企業が欧米企業のテリトリーで事業を進めようとすると、大きな壁にぶち当たる。
欧米企業が長年築き上げてきた盤石な仕組みが新規参入者の侵入を阻むからだ。
特に、欧州企業が相手だと、その壁は大きいような気がする。主に2つの理由がある。
事業の構想が生まれた時から、事業の陣立ての仮説があること。標準造りが上手いことの2つだ。

当たり前だが、新たな事業を立ち上げるには、新たなアセットが必要になる。
でも、できるだけ追加の工数をなくすためには、既存のアセットを流用するものを増やす。
これまで決めてきた事業の進め方やインターフェースなどの標準を変えなくていいからだ。
日本の言葉で言えば、阿吽の呼吸ということになるだろう。でも欧州ではこれが定義として存在する。

まず、新たな技術などの不可欠なアセット以外はなるべく既存のアセットを使う。
さらに、その新たな技術についても、なるべく早い段階で全体構想への組み込みを進める。
定義に合わせるにはどうすべきかを検討する。技術ができるだいぶ前からの検討が当たり前だ。
もちろん、事業の進め方については、それを分かった企業を優先的に選ぶという選択を取る。

日本企業がこうした強固な壁を打ち破るには何をすべきだろうか。大事なことはスピードだ。
打ち破るために用意するアセットは技術で良いと思う。特に大きな変革期では技術だ。
脱炭素などは製品自体を変えなくてはいけない。そしてそれを実現する技術は難易度が高いから逆に良い。
つまり、技術開発のスピードが勝負のポイントだ。さらに、その伝え方が鍵になると思う。

大事なのは技術の構想をしっかりと伝えられるようにすることだ。これがないと始まらない。
単なる課題整理とはちがう。こんな工夫により、こんな価値を生み出す技術を作るといった感じだ。
しっかりと全体構想と共鳴させながら、圧倒的な速さの開発を実現できることを納得してもらう。
これができたら、あとは遅延のない開発をやり切ることだ。難易度が高いが参入はできると思う。