募金とファンド

巷でファンドといえば、資金や基金という言葉の延長で、それを運用する会社を意味する。
お金を集めて、それを投資をする。そして出資者に投資の利益を分配するというものだ。
募金というのは、感謝の気持ちとしての小さな返礼などはあっても一方通行でお金を出す意味が強い。
赤い羽根募金などが有名で、募金すると地域や社会に貢献した印として、赤い羽根がもらえる。

美術館や博物館においても、ファンドレイジングという言葉が使われるのを耳にした。
どうやら2つのタイプがあるらしい。問題解決型と価値創造型の2つだ。
問題解決型は募金に近いイメージだろうか。特定の問題が示され、その解決に賛同してお金を出す。
典型的な問題としては、「企画展をやるが、その作品のレンタル料や運営費が不足」などがある。

一方の価値創造型とはどんなものか。美術館を建てるのに資金が足りない。これでは問題解決型だ。
新たな価値を生み出さないといけないので、美術館を建てるだけでなく、どんな日常を生み出すかだ。
住民と共にアートのある生活を生み出す拠点にする。そのために徹底的に開いた美術館を作る。
小中学校の美術の事業を行う、絵画教室を開催する、模写を自由にできるようにする。色々やれる。

こうすることで、単に美しい建物を建てるだけではない価値が見えるようになる。
住民の企画をどんどん盛り込み、住民自体に場所を能動的に使ってもらうこともどんどんやれる。
もしこんなプランが提示されたら、思わず「自分も資金を出したい」と考える人が沢山出ると思う。
募金とは明らかに異なる「大きな期待」と「完成を待ち望む想い」が生まれるに違いない。

募金や問題解決型のファンドの場合は、自分のお金が役にたったかを見に、美術館に訪れると思う。
一方、価値創造型のファンドの場合、訪れるのではなく、使うこと、日常を過ごすことが目的になる。
当たり前だが、なんどもリピートがある。美術館という箱の中で文化が育まれるようになるのだ。
美術館を起点にどんな文化を育みたいか。その構想を広く発信してファンドを集めたらどうだろうか。