何回も出向く

当たり前だが、初めて行く場所はワクワクする。何と出会えるかと期待に胸が膨らむ。
ネットやSNSが発達してからは、事前に見どころの情報を集めるので、ある程度予測ができる。
あそこに行ったら、あれとあれをみて、その後にここに行こう。こんな感じだ。
最近では、リモート観光で自宅にいながら体験もできる。VR観光では臨場感もかなりある。

例えば、美術館。展示スペースが広く、作品の数が多ければ1日で回れないこともある。
そうした場合は、今回はこのエリア、次回はこっち。こんな感じでリピートニーズが生まれる。
常設展の入れ替えなども効果的だ。「あの美術館の新たな収蔵品が見れる。行かなければ」だ。
なかなか見れない文化資産の特別展なども、リピートを含めて間違いなくたくさんの人を呼べる。

自宅にいながら情報が豊富に入手できる環境になった今、初回訪問のワクワク感は以前より少ない。
もちろん、実際の空間を五感で感じることは、ネットとは明らかな違いだが、新鮮さは一度で減る。
そんな状況下では、新しい作品を見る機会を作って、リピートニーズを生み出そうというわけだ。
都度、テーマを設定して、作品群の見せ方を考えて、情報を発信、訪問意欲を喚起していく。

少し違ったニーズもあるような気がした。作品鑑賞よりも空間に浸るために訪れるニーズだ。
遠くの海まで見渡せる落ち着く空間で読書に浸る。これは日常にその空間を持ち込んだ形だ。
学芸員を探し、学芸員との会話を楽しむといったニーズもある。プロから文化を学びたいのだ。
日本では見かけないが、模写をしにくるパターンが海外にはある。何日も何日も通う。

少しわかった気がする。リピートのキーワードは日常やルーティンの中に訪問を組み込むことだ。
学ぶ、スキルをあげる、続ける。そして居場所にする。美術館をこんな場所にできないだろうか。
作品に会いに行くだけではなく、そこの空間や人に会いに行く。会い続けたくなる理由を作る。
美術館が日常やルーティンに組み込まれている生活。かなりおしゃれで充実したものになりそうだ。