絶滅危惧種

人間の活動が生物環境に与える影響は大きく、それによる種の絶滅も発生している。
近年は、地球温暖化による生息環境の変化や消失、人間が持ち込んだ外来生物による影響が深刻だ。
最も絶滅の恐れが高いとされる幾つかのカテゴリーには、3万5,765種以上の野生生物が載っている。
欲求を満たすだけでなく、地球と人が共生するための工夫にもっと目を向ける必要があるのだろう。

とはいえ、今回は、野生生物の話をしたいわけではない。人間の道具の絶滅危惧種の話をしたい。
この10年、ガソリン車、ディーゼル車は生物環境に与える影響の大きさ故に、姿を変えてきた。
燃焼効率を究極に高めるために、燃焼室の形、燃料と酸素の混ぜ方、燃やし方など工夫をしてきた。
変速機も、マニュアル操作のものから、多段階かつ自動制御で燃費を稼ぐものに変わってきた。

通常、エンジンは回転数によって燃費が変動する。低回転でも高回転でも燃費が悪くなる。
そこで、出したい速度を、常に中回転で実現できるように多段階のギアを自動で操作するのだ。
極端に言うと、エンジンは最高燃費のでる回転数でほぼ一定だが、ギアの上下で速度が上下する。
しかも、動力がタイヤに伝わらないギヤチェンジの速度は、自動なら人の10倍以上で無駄がない。

更に電動アシストも加わる。いわゆるハイブリッドだ。エンジンの力をタイヤと電池に振り分ける。
エンジンは最高燃費の回転数で回り続け、加速が必要ならタイヤへ、余ったら電池に力を伝える。
電池に貯めた力は、強い加速が必要な時にはタイヤへ送られるが、エンジンは同じ回転のままだ。
よく考えたものだ。でも、人がアクセルワークでエンジンの回転数を操作することはもう必要ない。

エンジンだけでなく、ギアも操作する必要がない。もはや全自動洗濯機ならぬ、全自動自動車だ。
かつては、低回転から高回転まで滑らかに吹け上がるエンジンをマニュアルの変速機で操った。
こんな車はもはや絶滅危惧種だ。欧州にはまだ残っているが、日本にはもう10モデルもないだろう。
マニュアル操作のガソリン車。操る楽しみのある車。こんな道具を巧い形で残す事も必要だと思う。