トランス。

昨日は、友人のライブに行った。当日に突然のメッセージが来たのだ。
以前から、神の指を持っていると感じていたギタリストからの誘いだ。
またとない機会なので、すぐさま日程を調整してライブハウスに赴いた。
久しぶりのライブハウス。なんとも言えない雰囲気が漂っていた。

ドリンクは缶ビールを注文した。プッシュと開けて準備の姿を見守っていた。
おそらく本番での演奏に紐づくと思われる楽曲が流れ始めている。普通ではない。
否応なしにワクワク度が上がっていく。音量がすごい。本番に耐えられるかと思うくらいだ。
ふと会場をみると、後ろまでほぼ満員だ。コロナ禍との新たな付き合いの始まりだ。

いよいよ始まる。真ん中にパソコンの人がいる。ボーカルとバンドというスタイルではない。
ステージの右手には不思議な白い箱を前に楽器を持たない人もいる。とても怪しい。
左手は神の指の友人だ。奥にはベースとドラムがいる。全部で5人での演奏だ。
打ち込みされたプログラムを起動して、生の演奏が何重にも重なっていく。

真ん中のパソコンの人が司令塔だ。吹いて音を出す鍵盤も操る。マルチタスクだ。
時には指揮者のように、時にはリードキーボードのように、全員の能力を引き出し組み合わせる。
白い箱の人は、箱の上に両手をかざし、2つの手の動きで音を操っている。箱は楽器だった。
どうやら左手で音を変え、右手でビブラートをかけている。真顔の演奏になんとも怖さがある。

ギターは1秒間に何音だしているのか、全く分からない速さだ。左手でも弦を叩く。
右手はピックで連打している。おそらくギター一本から同時に10以上の音が出ていると思う。
ベースもドラムも異常な速さだ。思わず身体がリズムを刻み、いつのまにか飛び跳ねている。
魂が揺さぶられる。引き込まれる。久しぶりに思い出す。日常にトランス状態を作りたくなった。