目に入ることの威力。

昨日はなんとも素敵な空間を体験することができた。未来的でもあり落ち着きもあった。
優しい光が、天井に設けられた多数の太めのスリットから降り注ぎ、空間に充満している。
外壁は肩の高さくらいまでは全てガラスで覆われ、壁際にはスッキリと何一つない。
向かって左側の壁の側には一段上がったスロープがあり、建物内部を見渡せる構造だ。

広大な空間だが、建物の骨組みは壁と天井だけでできている。柱は存在しない。
いわゆるトラス構造というのだろうか、素晴らしい設計だと感じた。でもリニューアルだった。
構造はそのままに全ての鉄骨がシルバーに丁寧に塗られている。まるで新品同様だ。
太めのスリットのある屋根は新たにデザインされたのだが、これが別世界を演出している。

この建物は実は工場だ。蓄電用の電池やその充電器、更には車用の充電器を生産している。
完全には完成していなかったが、ひとつはセル生産とライン生産が融合したような形だ。
もう一つの重要物の組み立ては産業用ロボットが全自動で担うものだ。組み立て溶接すべてだ。
驚いたのはそのロボットが白く塗られていた事だ。ロボット業界では稀。でもとても似合っていた。

完成品を搬出するゲートには工場内の空気を汚さないための大きなカーテンがあった。
これも素敵な美術館の中にある装飾のように感じた。とてもキラキラと上質な輝きを放っていた。
細部のこだわりを聞くたびに、どんどんその建物が好きになっていくのが自分でも分かった。
空間の力に魅了されていくのだ。統一感というか、優しさというか、そんな感覚に包まれていった。

昨日その空間に訪れたのは50人くらい。会議をやるために集まったのだが明らかにいつもと違った。
気持ちに清々しさがあったのか、夢を描きたくなる心持ちになったのか、話が弾む。
お金がない。新しいことなどやる時間はない。そんなこれまでのムードは何処かに消え失せた。
同じ素敵なものが50人の目の前に。多様化した世界では空間の力に勝るものはないのかもしれない。