ホテル。

日本にはラグジュアリーホテルがない。そんな話を最近よく耳にする。
都心の外資系ホテルなら一泊で10-20万円の部屋などたくさんあるのに。
そんな感覚でいたが、どうやらそれは大きな間違いのようだ。それらは高級レベルだ。
ラグジュアリーというレベルでは、50万円は当たり前で上をみたらキリが無い。

パリでは一晩で1000万円の部屋もあるのだと言う。どんな部屋なのか想像がつかない。
でも、快適性から、調度品、おもてなし、食、セキュリティまで何もかもが素晴らしいのだろう。
当たり前のように最高のコンシェルジュが付き、どんな要望にも対応してくれるのだろうか。
交通手段はリムジンどころか、ヘリも使えたりするのだろうか。飛行場まで一っ飛びだ。

日本には城泊なるものが最近できた。一泊100万円だ。かなりの体験が詰まっているようだ。
将軍の出立ちに扮して、将軍の1日を再現する。結構な人数で様々な演出を行う。
泊まる場所は天守閣だ。お城のてっぺんで眠る感覚はどうだろうか。統べる責任を感じるのだろうか。
朝起きたら自分がどこにいるのかが一瞬分からなくなる気がする。それだけ新鮮な体験だ。

でも、日本人は、宿泊代を考える時、どうしても原価を考えてしまうような気がする。
この大きさの部屋で、美味しいご飯がついていて、これだけの体験がついているなら価格は妥当だ。
提供側も、高い値段を設定する時、あれもこれも特典や体験をつけて、納得感を醸成しにいく。
残念ながら、価格設定は、原価の積み上げになる。故に、あまり値段を上げることができない。

もっとシンプルに価値に浸れるワクワクの空間づくりに注力した方がよいのではないだろうか。
人為的に一生懸命つくる体験プログラムより、伝統やアートといった奥行きのあるもので勝負する。
泊まる人がそれぞれの感性を存分に解放する。その感覚を後押しするために、食やアメニティがある。
真のラグジュアリーのレベルは想像はつかないが、心が落ち着くホテルを日本に増やしたいと思う。