味覚の神秘

日本人の味覚は繊細だ。日本の食文化から旨味という5つ目の味が見つかった。
こんなことが世の中で言われている。実感としては日本食の味は確かに繊細に感じる。
日本で食べるイタリアンやフレンチもなんとなく、本国のものより美味しい気がする。
これは味覚の「慣れ」の影響だと思うが、日本では丁寧に作られた食事が多いと思う。

先日、飲み比べをやった。飲み比べと聞けば、通常、「利き酒」を想像すると思う。
でもその時やったのは、正確には「利きグラス」と言うべき挑戦だった。中身は同じだ。
5つのグラスがあったが、グラス自体は変わらない。口を当てる部分に細工を施してある。
いわゆる表面処理だ。そのままと、4つの異なる表面処理をしたグラスで飲み比べを行った。

中身は高級な紅茶だ。仲間企業の25周年の記念に頂いたものだ。なかなか深みのある味だ。
どうしても先に左脳で考えてしまう。液体が口に入る時の流速、空気との混ざり具合。
凹凸の違いや濡れ性の違いがどう液体の状況を変化させるのかに頭を巡らせる。
もう一つ、唇がグラスに触れている感覚も違いそうだ。その感覚が味に影響する。

ビールを思い出した。キンキンに冷やしたグラスでビールを飲むと明らかに爽快感が増す。
グラスを冷やしていないとビールの温度は下がるが、唇から伝わる爽快感があると思う。
実はこの利きグラス、私自身は試していない。友人2人が挑戦したのを見ていたのだ。
自分と同じ左脳の友人は、私と同じように、頭で先に考えていたように見えた。

考えるな、感じろ。どこかで聞いた言葉を思い出した。自分がやる時は真っ白な状態で挑みたい。
目を瞑り、唇と舌触り、香りの3つの感覚に集中して、やってみる。語彙が足りるだろうか。。。
右脳の友人は、それぞれを何回か口に含んでは、頭に浮かんだままの感想を話し始めた。
最初はあやふやだったが、次第に確信を持って違いを語った。なかなかマジカルな体験だった。