導線を作る。

先日、ある美術館で小さなワクワクがあった。何もなさそうな出口があった。
建物と建物の間にある空間へとつながる出口だった。出ていいと小さく書いてある。
流石に文化財に指定されている建物だけある。外壁の装飾、荘厳な雰囲気も素晴らしい。
建物の隙間から差し込む太陽の光がなんとも言えない温かみを加えている。

すごく落ち着く空間だ。おしゃれなベンチなどあったら居着いてしまいそうだ。
深呼吸をしながら豊かさを味わっていたが、角を右に曲がるとまだ奥があることに気づく。
ゆっくりと進む。明るさが増し、引き込まれるように少し上を見ながら進んでいった。
建物自体は変わらないが陽の差し込み方が変わるだけで、驚くほど表情が変わる。

あ、また右に曲がれる。流石に何もないかなと思いつつも、ゆっくりと進んでみた。
でも、もしかしたらと期待しながら進んだ。目に飛び込んできたのは赤いオフジェだった。
それまでの空間にあった石の色とは明らかに異なる鮮やかさだ。ぐっと引き込まれた。
少し足速になり、近づいていくと、著名な作家の作品だった。周りをゆっくりと回った。

その空間には自分しかいなかった。その空間を占有するという贅沢な時を過ごした。
ゆっくりと時間は流れ、陽の光と少し張り詰めた空気と鮮やかな赤を楽しむことができた。
出口を出た時にはまったく想像していなかった。出口ではなく、特別な空間への入口だった。
赤のオブジェまでの道は、入り口から「コ」の字になっていた。創意にみちた空間だった。

ワクワク感でなんとなく進んでしまう。進んでいる間も豊かな気持ちにしてくれる。
進んでいくとグラデーションのようにゆっくりと変化する路。明るくなっていく。
そして、突然現れる明らかに異なるもの。入り口からは全く見えない。でも調和している。
暫くしたらもう一度訪ねてみたい。今度はどんな空間があるのか楽しみだ。いつ行こう!