構想の量産と武器供給

最近、色々なニュースや寄稿で新たな価値を創造すべきという論調が多くなってきたように思う。
少し前までは、「DXで業務の効率化をしました、調達コスト削減で増収を実現しました」が多かった。
コロナ禍で、ある意味時間の余裕ができた事、現在の延長線上では乗り切れないという危機感が生まれた事。
この辺りが世の中のムードを変えた理由かもしれない。そこだけ取れば悪い変化ではない。

大きな方向感としての「新価値創造」に反対はない。誰もが新しい収益の柱を建てたいと考えている。
でも組織の慣性力が存在する。今までとほぼ同じ価値を如何に少ないリソースで実現するかに頭がいく。
現在の商品やサービスの改善点を洗い出し、それを潰していくというアプローチを取りがちだ。
改善にはコストがいる。その原資を生み出すために、調達先に既存部品のコスト削減をお願いすることになる。

サプライヤーは原価低減のための創意工夫がうまくなる。自らの工程を緻密に分析して改善を続ける。
確かに重要な活動だが、でもそれは顧客とは遠いかなり内向きな作業だ。新価値創造につながりにくい。
メーカーとサプライヤーとのヒエラルキーも新価値創造を抑え込む。メーカー領域に踏み込むのはタブーだ。
ただ、これらも少しずつ変化してきたと思う。メーカーどころか消費者に直接提案をするサプライヤーもいる。

メーカーがサプライヤーに提案を求める背景は、メーカー自体が取り組む付加価値の変化にある。
製品を作るという概念から、その製品を使った生活や、他の製品と共に人々の生活を彩るという概念に向かう。
守備範囲が広くなり、全体構想までできたとしても、個々の要素までアイディアを作り込むことはできない。
全体構想自体に時間がかかり、手が回らないという方が実情に近いかもしれない。新価値構想に慣れていない。

世の中の良い流れを止めたくない。新たな価値の構想の訓練を加速度的に進めていきたい。鍛錬がいる。
どうするか。構想を担う人の前に、使いやすい武器を並べることだ。これ使ってみたいと言わせることだ。
たくさんの異分野にも触れ、足し算や掛け算の威力を体感して欲しい。小さいことからやってみることだ。
サプライヤーは武器を研ぎ澄ます。中身自体と伝えるための工夫の両方だ。早く構想の量産体制に入りたい。