ありものビジネス

自動運転。10年前であれば、夢の世界だ。でも今は手の届きそうな世界と感じる人も多い。
最先端の自動運転機能も完璧ではないものの、上手く動作する道路環境も増えている気がする。
一方、空港などでは低速の車椅子が自動で目的地に到達できるようになっている。人や障害物も避けられる。
3次元地図と各種センサーを組み合わせて、自車位置と周辺の環境をリアルタイムで測定して運転している。

物事には難易度がある。もしくは「突き詰め度」なるものがある。自動運転の場合も同様だ。
自車以外のモノが周辺に多く、かつ高速で移動していたり、死角が数多く存在している場所は難易度が高い。
そこでの自動運転は、状況を掴む力、次の一瞬を読む力を突き詰めないといけない。スピードが勝負だ。
技術者はついつい難易度の高い課題を克服する挑戦をしてしまう。突き詰めたい衝動がある。

最先端の街中や高速道路での自動運転と、空港での車椅子の低速自動運転では難易度は明らかに違う。
技術的な難易度はかなり違うと思う。もちろん、街中の方が難易度が高い。だから完成度も大きく違ってくる。
街中での自動運転はまだ運転支援というレベルを脱していない。人が車の運転を監視をする必要がある。
つまり、街中の自動運転は未完成だ。空港での低速自動運転は完成というくらいの開きがある。

今ある技術の組み合わせで実現できるものを「ありものビジネス」と呼んでいる。
空港の低速自動運転は「ありものビジネス」だ。今ある複数の技術を摺り合わせて実現している。
足の不自由な人、隔離が必要な人の移動にぴったりで一定の需要もある。空港以外にも展開できるビジネスだ。
メリットは、事業を比較的早く始められること。開発内容を絞れるため投資規模も抑えられる。

街中の自動運転は「ありものビジネス」ではない。未完成であり、様々な開発要素の占める割合が多い。
もちろん、これを突き詰めるのも大事だし、進めるべきだが、スタートアップなら別の戦い方もある。
まず、開発要素の限定的な「ありものビジネス」に留めて、ニーズのあるサービスで事業に仕立てる。
サービスのステップアップを描き、より突き詰めたものを順々に足していく。速度とシーンを足すイメージだ。