空間を仕込む。

コロナ禍に入ってからだろうか。インスタレーションという言葉を知った。
それまでは言葉を聞いてはいたものの、何を示すのかを気にすることも無かった。
オブジェや装置を置いて、作家の意向に沿って空間を構成し変化・異化させる。
そして、来訪者に、場所や空間全体を作品として体験してもらうことだと分かった。

まず思ったのは、心地の良いレストランの内装。インスタレーションだ。
もちろん、作家ではなく、設計者などが手掛けたので正確には違うかもしれない。
でも、食やお酒と空間が相まって、料理人と空間が相まって体験を生み出す。
忘れてはいけないのは器だ。デザインはもとより、手触りも演出されている。

ホテルもそうだ。入った瞬間にホテルの雰囲気が伝わってくる。もちろん外観もだが。
何か落ち着いた雰囲気が伝わるところが好きだ。心拍数が下がる感じがいい。
それから手に触れる場所にも気遣いがあると嬉しくなる。触れる前に目がいくからだ。
意外と大事なのが匂いだ。気づかないくらいのほなかな演出があると心地良い。

今年のゴールデンウィークは野外劇場で演劇をみた。最初は殺風景な舞台だと感じた。
残念ながらいつもの妄想力は働かず、なかなか大変だなぁ。といった感覚だった。
それがいざ始まって見ると、作品に引き込まれていく。人工の舞台を感じなくなった。
作品の時代にタイムスリップしたようだ。一番驚いたのは舞台の後端に壁がないことだった。

後ろの景色が筒抜け。でも実際には筒抜けの景色が空間の中で力を発揮していた。
もちろん、照明や演者の動きとの連動もあるのだと思う。でもとにかく一体だ。
インスタレーションという言葉を知ってから、空間の仕込み方が気になるようになった。
ワクワクやドキドキ、タイムスリップ。何でも生み出す魔法の一つかもしれない。