空間のデザイン。

ターゲットがはっきりしている場合、そのターゲットを迎える空間は作りやすい。
でも、往々にして空間に求められることは、様々なターゲットを迎えることだ。
劇場で芸を見せるなら、それを趣味とする人から、新たなファン獲得までターゲットは広い。
その広いターゲットを惹きつけ、じわじわと、もしくは瞬時に魅了する空間が欲しい。

多くの場合、どうしてもその芸の説明をしてしまう。練れば練るほどマニア向けになる。
一般の人には難しくなり、敷居は高くなる。新たなファンを阻害する原因になるのだ。
突然、アニメとのコラボなどを始めたりすると、どっとアニメファンが押し寄せる。
すると、長く趣味としてきた人にとっては、何か違わない?という感覚が生まれる。

長く趣味にしてきた人と、新たなファン候補。両方に響く空間とはどんなものだろうか。
まずは、それら両方の人が身近に思えるものを探す事だと思う。例えば、カフェだ。
例えば、入口の敷居を低くして、そこでやっている芸に因んだメニューを持ってみる。
そうすれば、日常の中でその芸に少しずつ触れることができるのだ。

そんなところに、突然本物の芸人さんがやってきたら、途轍もないインパクトになる。
一気にファンになってしまうだろう。そして、その劇場の奥にある展示や舞台に興味が湧く。
昔からのファンはどう思うだろうか。確かに見慣れない層の人が劇場のカフェにいる。
それでも、芸に因んだメニューを食べたくなる。芸人に会える瞬間を心待ちにすると思う。

劇場の舞台は100%芸の空間だ。一方、カフェは80%は日常で20%芸が混じる空間だ。
展示スペースは60%芸で残りの40%遊びで良い。グッズショップは芸4対遊び6ではどうだろうか。
それらが劇場という全体の空間に、エリアを分けて存在している。もちろん導線も考える。
芸100で説明のマニア度を変える。それもありだが、芸を薄めて日常に混ぜることが大事な気がする。