興し手

資本主義の中で、これまで長らくピラミッド型の組織が力を発揮してきた。
トップが構想や戦略を練り、ピラミッド内の各組織が役割分担をして実行する。
与えられた役割をいかにやり切るかが勝負だ。全ての組織がやり切れば成功だ。
状況は逐次モニタリングされ、雲行きが怪しいところにはテコ入れが入る。

物事が複雑になってくると、ピラミッド型の組織の動きが少し変わってきた。
構想や戦略の立案のステージにもピラミッドができた。外部の参謀も雇い始めた。
全体を見渡し、その時間軸での推移をしっかりと組み立てるには組織が必要だった。
役割分担はより緻密になり、実行のピラミッドの組織には自由度が無くなっていった。

別の動きもあった。大きな構想や戦略は決めても、細かな役割分担をしないという進め方だ。
ピラミッドの上から下への指示、下から上への報告しかなかった世界が大きく変わった。
それぞれの役割を持った下の組織が相互に連携を取り始めたのだ。現場で状況変化に呼応した。
「単純に自らの役割を貫く」から「協力して難題を突破する」の要素が加わったのだ。

今の社会、未来に向けては更なる変化が起きているような気がする。上下の階層が消えていく。
勿論、大きな構想を作る人は必要だ。そこに貢献できる人を見出し巻き込む人も必要となる。
異なるのは、構想を作る人と、そこに貢献する人の距離感だ。明らかに短くなると思う。
緻密な役割分担などなく、昔で言えば阿吽の呼吸で、それぞれが構想に向けてプロとして動く。

大きな構想を作る人は興し手だ。充実した状態を興す人だ。ここに人の能力を見出す人が加わる。
さらに、構想実現に共鳴するその道のプロが参戦する。生まれも育ちも違う多様なプロ達だ。
興し手はトップではない。共鳴したくなる構想を打ち立てる人だ。実現後の姿に興味津々だ。
プロ達の自由な創意工夫が増幅し合い、創造を超える何かが生まれるからだ。世界は動いている。