ざっくり。

小さな頃、包丁を使って料理まがいのことをしていた時にそれは起きた。
ざっくりと指が切れた。要は深く抉られた感じだ。指先なのでとても痛かった。
家で作ったお茶を入れておく容器を分解していた時にも、それは起こった。
注ぎ口の開閉を自動にするためにバネが入っていたのだが、それが悪さをした。

ざっくりは、痛かったり、大きく開いたり、深かったり。そんなイメージだった。
でも、科学者をやめて、コンサルタントになった時、新しい意味に出会った。
初めて聞いた時は、全く意味が分からなかったが、すぐに多用する言葉になった。
大雑把な感じだが、それだけではない。勘所を掴みつつ、シンプルに捉える感じだ。

明らかに雑とは違う。大胆に本質的な部分のみを引っ張り出して表す。難易度は高い。
短い時間で本質を洗い出して、要するに〇〇といったように、纏める感じにも近い。
「ざっくり整理しといて」これはマネージャーがよく使う言葉だが、かなり便利な言葉だ。
簡単な作業風に伝えられるのだが、実際は、鍛錬なしにはできない。センスも必要だ。

そういえば最近、ざっくりという言葉を説明する機会があった。捉え方がだいぶ違うように思った。
どちらかといえば、重要性が高くない作業なので素早くこなすといった意味合いで相手は捉えていた。
極端にいうと、資料に目を通して、「間違っていてもいいのでまとめて報告せよ」と理解している感じだ。
全く勘所を捉えていない状況になったのは、ざっくりという言葉の定義が違うからだった。

世の中は様々なことが起こっている。複雑に絡み合い、なかなか紐解くのが難しくなっている。
そんな時、ざっくりという概念は非常に大事だ。視野を広げてたくさんのものを扱うには不可欠だ。
場合によっては、たくさんのざっくりを、ざっくり束ねることすら必要になると思う。
それだけ、世の中は複雑なのだ。複雑なことを簡単に表す。まだまだ鍛錬を続けたいと思っている。