産業観光とレガシー

その地域特有の産業に係る工場、職人、製品。そして昔の工場跡や産業発祥の地などの産業遺構。
これらを観光の題材にして、来訪者を魅了する。産業観光とはそんな取り組みだ。
ビールやウィスキーや車の組み立て工場の見学。富岡製糸場などでのアートイベント。
以前から色々な取り組みがあったが、産業観光という言葉が日本で言われ始めたのは2000年頃らしい。

どうやら産業観光には色々な目的がある。まずは、地域特有の産品の宣伝やブランドづくり。
ものづくりへの興味喚起・人材育成。ビジネスに直結する潜在顧客へのアピール。
就職を見据えた人材の獲得。どの目的も、賑わいづくり、担い手づくりに効きそうだ。
さらに、世界遺産登録や特徴のある商業施設や文化施設への再利用なども盛んだ。

新たな楽しみ方としては、巨大な煙突やタンク、コンビナートなどの独特の景観を楽しむ。
特に、ライトアップされた夜景を眺めるといったものも出てきて、工場萌えという言葉すら生まれた。
また、最近では、知って、学んで、体験する。この一連の知的欲求に応える取り組みもある。
STEAM教育の場としても、工場や匠の技が活用されることもある。現場のスケールに圧倒される。

通常の観光は、基本的には非日常に触れる、美しさに触れることがメインだと思う。
アーティストの作品、自然の景観、美味しい食事、癒される宿。この辺りが構成要素だ。
文化観光では、その土地が育んでいる文化を感じる。文化に魅了されると支え手や担い手になる。
地域特有の文化のメッセージを受け取り、化学反応が起きた証拠だ。何か深みがある。

では産業観光はどうだろうか。文化的な側面があるのは間違いない。さらに凄技がありそうだ。
凄技でものを生みだすプロセスが体験できる。人類の知恵が凝縮した姿と言っても良い。
故に、産業遺構を見て、最新鋭の工場を見ると、人類の知恵の進展を辿ることができそうだ。
だいぶ産業観光に興味が湧いてきた。時空を飛び越える観光で脳に刺激を受けてみたいと思う。