例示に負けない。

どんな書類でも初めて書く書類はどう書けばいいかか分からないことが多い。
そんな時、必ずあるのが記入例だ。京都太郎など存在しない名前で書いてある。
どの欄まで埋めれば良いかは赤枠などで囲われていて、とても分かりやすい。
世の中には、こうした例示がたくさん整備され、効率的に物事が進められるようになった。

補助金の申請なども同様だ。仕様書には書くべき内容の例示がたくさんある。
例えば、こういう内容を書けば、採択されやすいのだと、理解することができる。
読み手は頭の中で、自分のやりたいことをどう表現すれば例に近づくかを考えていく。
もしくは、自分のケースで、例にあるものをそのまま使えるところはどこかを考える。

こうした補助金の申請の多くは、審査会があり、一定の基準で公平な評価をしていく。
申請書の例示は、審査員の評価の拠り所にもなっている。まずは必要項目が書かれているかだ。
次は、それぞれの項目で、例示にあった内容が書かれているかと、どうしてもなっていく。
要するに、例示が正しい答えかのように認識され、作り手の意思とは別に一人歩きしていくのだ。

こうして申請者にも、審査員にも個別の項目を満たしているかというバイアスがかかっていく。
仕様書に沿っているかが大事で、全体でやりたいこと、本来の目的の比重が少なくなっていく。
お金を取ることが目的化する。特に予算が厳しいところ、人手の少ないところはそうなりがちだ。
こうならないためには、例示の意味合いを申請者も審査員も改めて意識する必要があると思う。

例示とは、あくまで例を示したもので、この限りではない。創意工夫こそが求めれているはずだ。
例に書かれたものは、何故良いのか。その例は全体の大きな目的にどう貢献できるのかを考える。
個別の項目に示すことで見えにくくなる「全体で成し遂げたいこと」を明確に意識することが大事だ。
こうして使うと、例示以上の効果を生む使い途になる。こんな意思があると上手くいくと思う。