町工場の仕事

これまでに色々な工場を見てきた。自動化の進む巨大工場もあれば、小さな町工場もある。
町工場も色々だ。手仕事の極みのような工場もあれば、数人が見廻るだけで動く工場もある。
共通して感じるのは、工作機械などの装置を自らの手足のように動かす凄技を持っていること。
量産であれ、試作であれ、どんな材料であれ、見事な出来栄えの加工品を生み出してくれる。

もう1つ感じることがある。其々の町工場が持つ凄技は限られた特定の作業にしか使えないことだ。
一般人が何かを作りたい、この家電を作りたいと考えた時、1つの町工場では技が足りないのだ。
逆に言えば、世の中で手に触れる製品のほとんどは、様々な凄技の組み合わせでできている。
単純な技の組み合わせで作られる製品もあるが、きらりと光る製品は幾つかの凄技が使われている。

町工場が成長するためにはどうすれば良いのか。これまでは量産の仕事を取ることで成長してきた。
特定の家電メーカーや自動車メーカーなどから、自らの凄技が活かせる部品を受注してきた。
不足する技は、協力会社にお願いする形を取るが、全体を取りまとめ、責任を持って仕上げていく。
こればかりに頼れない。利幅が低く、依存度が高い場合は失注リスクが大きな問題となるからだ。

試作を極めるというアプローチもある。メーカーにとって試作のできる町工場はありがたい存在だ。
ものづくりが多品種少量へと変化する中、メーカーは自前での試作が難しくなってきているからだ。
メーカーには別の悩みもある。製品の企画・設計を超え、製品の体験のデザインが求められている。
結果、外注先選定や図面詳細化まで手が回らなくなっているのだ。技術購買の肩代わりが必要だ。

勿論、完成品全てをいきなり任せるところまではいかない。まずはモジュールの切り出しで良い。
そこで、納入先の設計や購買の役割を一部取り込むことを考えたい。そこから少しずつ広げていく。
今、メーカーの仕事が変化している。メーカーでない企業やベンチャーが製品を作ろうとしている。
色々な凄技を抱え、適所適技を描き実行する。町工場が群れとなり実現する世界を作ってみたい。