遠隔体験。誰に届ける⁈

最近、どんどん技術が進化している。通信速度や映像伝送技術などはその典型だ。
大容量の動画をほとんど遅延なく送ることができるようになっている。距離を感じさせない。
昔は、衛星放送などでよく見たが、数秒の遅延が起きるのが当たり前だった。そんなコントもあった。
今や現地で自分の目で見るのと遜色ないクオリティだ。360度のVRならかなりの没入感もある。

ただ、当たり前だが、現地と遠隔体験では色々異なる。まずは移動という行為そのものだ。
家で支度をして、車や電車で出かける。ここが違う。敢えて時間を掛けていくという行為だ。
事前に、色々と調べ物もする。その時間をより有意義な時間にすべく頑張るのだ。
色々なシーンを頭に浮かべながら、あーでもない、こーでもないと、にやにやと計画を立てる。

いざ移動の段になると、期待感はどんどん高まる。スマホの地図を片手に目的地へと進む。
車内でのお弁当も一大イベントだ。それぞれ別々の駅弁を買って食べるとかなり盛り上がる。
いよいよ最寄駅などに着くと、空気感が異なる。多くの場合、圧倒的に明るく、清々しい。
空気が美味しく、空が広い。自然の匂いが鼻に飛び込んでくる。気持ちが晴れやかになる。

遠隔の場合、こうはいかない。着替えて雰囲気を作ってもあくまでもPCの前だ。非日常がない。
VRゴーグルを被って外界と遮断して、しばらく没入すれば目の前の日常を追い出すことはできる。
でも、やはり移動による空気感の変化や、移動時の揺れや荷物の重さなどの触覚は再現できない。
現地体験を重ねてきた人にとって、遠隔体験では満足できない理由がここにあるのは間違いない。

遠隔に行く時間とお金のない人、遠隔に行けなくなった人、遠隔に行ったことのない人がいる。
ならば、こうした人に、できるだけ空気感を伝えながら、遠隔体験を届けるのが良いと思う。
幸いにもハプティクス技術を使えば、遠隔の人と触感で繋がれる。目をつぶれば時空を超える。
遠隔体験は現地体験の代替ではない。現地の人との追加の触れ合い生むための技として広げてく。