材料のもつ可能性

視覚を操る技術がたくさん揃ってきた。XRなどももちろんそうだが、材料の革新も止まらない。
例えば、景色が綺麗に見えるようになるフィルムだ。特殊な材料を開発して実現した。
その材料は黄色の波長をカットし、風景や物体のくすみを和らげ、くっきりと見えるようにする。
大型の窓のあるホテルや水族館等で使われている。最近ではオフィスの特別感を出すためにも使われる。

スクリーンとガラスを良い塩梅でバランスさせた材料も出てきた。ガラスなのに映像を映せる。
既存のガラスの上に貼り付ければ使えるという優れものだ。夜のショーウィンドウが楽しみな技術だ。
今後はこのスクリーンにタッチセンサーなどを仕込んで、見ている人との対話も実現したいという。
できれば非接触で手の動き等を感知する技術との組み合わせが良い。ガラスの汚れも気にならない。

ミストに映像を映し出す専用装置も出てきた。ミストなので平滑な映像ではないが、雰囲気はある。
特に炎や泳ぎ回る熱帯魚などを映すと臨場感が出る。ミストなのでスクリーンを潜ることもできる。
スクリーンを触っても人がずぶぬれになったり、映像を投映しても乱れたりすることがない。
ちょうど良い大きさの水の粒を安定して送り出す技術が濡れない水のスクリーンを作り出した。

こうしてみると、ものづくりには材料の革新のアイディアが不可欠なのではという気がする。
材料工学科の専攻だったからいうわけではないが、既存材料の加工だけでは創出できる価値は小さい。
場所によって配合を変えられる材料。炭素繊維で強化した材料。2種類の材料の貼り合わせなどなど。
性質や機能をデザインする。場所によって変える。様々な性能をバランスさせる。色々やりたくなる。

一度、材料の革新を起こすと、次はその加工への挑戦だ。往々にして新材料の加工は難儀だ。
でも材料自体の配合や製法に特許をとって、その加工方法まで難しいとなれば付加価値は上がる。
最近ではコンピュータシミュレーションで材料の性質や機能を予測する技術も出てきた。
ものづくり企業の進化の方向性は材料技術と向き合う。これが大事なのではないだろうか。