発酵にみる好き嫌い

人間もそうだが、生物には好き嫌いがあるような気がする。例えば、乳酸菌と牛乳だ。
乳酸菌は、牛乳が好きで牛乳のタンパク質や糖を分解して、固めてヨーグルトにする。発酵だ。
ヨーグルトを作りたかったどうかは別だが、牛乳からエネルギーを得た結果がヨーグルトだ。
おそらく、乳酸菌にとって、牛乳は好物でヨーグルトは食べ終わった「いらないもの」だろう。

乳酸菌は、種類によって好物が違う。大豆が好き、きゅうりが好きなど様々な乳酸菌がいる。
結果として我々が納豆や味噌、漬物と呼ぶ食べ物ができる。生乳が好物の乳酸菌はチーズも作る。
ここで人が出てくる。発酵してできた食品を食べる。乳酸菌ごと食べる。続けて食べたくなる。
ヨーグルトやチーズ、納豆や味噌が好きだからだ。更には体に良いことも研究済みだ。

腸を整えたり、コレステロールを抑えたり、免疫力を高めたり、老化を防いだりしてくれる。
乳酸菌を善玉菌と呼ぶ理由だ。因みに腸では乳酸菌が他の菌の増殖を防いでもくれる。
乳酸菌は腸の中に、他の菌がいづらい環境を作っているのだ。ここにも好き嫌いや相性がありそうだ。
人はこうした菌同士の好き嫌いの恩恵を受けている。生物の世界は好き嫌いで出来ているみたいだ。

以前、滋賀の余呉湖の側でとっておきの発酵料理をいただいた。発酵への慣れはなく、恐る恐るだった。
結果から言うと、とても美味しい。何度でも食べたい!最高の気持ちになった。お酒も進んだ。
でも、人にも好みがある。納豆を食べられない西洋人は多い。日本人にもいる。嫌いなのだ。
腐っていると感じて体に良いとは思えない。同じものでも人の種類によって好き嫌いが生まれる。

因みに、発酵という言葉は人にとって有益なものに使う。一方、有害なものには腐敗を使う。
美味しいものが発酵、美味しくないものが腐敗だと、風習や好き嫌いも絡み定義が曖昧だ。
食物連鎖。好き嫌いの連鎖。生物の世界では至る所に好き嫌いがある。どの生物も生きている。
身の回りを「少し引いた視点」でみてみる。色々なものが同じメカニズムで動くのに気づくと思う。