一気通貫の力

麻雀のアガリ役に一気通貫というものがある。1、2、3、4、5、6、7、8、9が並んだ役だ。
普段の生活でもこの言葉を使うことがある。始めから終わりまで一通りそろっているという意味だ。
例えば、ものづくりでは、企画から設計、試作、量産準備、量産まで様々な役割・機能がある。
これらをすべて1人で順番に仕事をする場合、一気通貫で仕事を進めていると言って良いだろう。

ここ数十年、製品が複雑化・高度化する中、これらの役割・機能を分業したのものづくりが進んだ。
必要となる専門性が多岐に渡り、1人でそれら全てをマスターするの容易ではないからだ。
サービスでも同様だ。効率性を上げるための分業が進み、安価にきめ細かく提供されている。
最近では、分業における連携をよりスムーズにするために、インカムの活用も多く見られる。

ものづくりの世界では、より高度なITが使われ、同一の製品に携わる人の活動が見える化される。
その場にはいない他の役割を持った人の行動や進捗が、その他の人に瞬時に共有される。
しかも、他の機能・役割にどんな影響があるかもリアルタイムで判断してアラートするものもある。
こうした分業の高度化はどんどん進んでいるが、少し見失いがちなものも出てきている。

一連の役割・機能を俯瞰する感覚だ。インカムやITがあればある程度俯瞰できるのは間違いない。
でも、これが意外と難しい。他の役割・機能を体感したことがないので業務に手触りがないからだ。
インカムやITの情報は、自らの役割・機能に影響のあることだけを捉えて、行動に移すことが多い。
もう少し、企画から価値を届けるところまで一気通貫で仕事をすることが重要な気がしている。

ものづくりは量産から多品種少量生産が進んでいる。組み合わせのものづくりも進んでいる。
複雑な機能を誰でも理解できるような工夫も進んでいる。サービスでも同様の傾向がある。
ならば分業では難しい「顧客の顔を見ながら、提供したい価値に真っ直ぐ進む仕事」が効くはずだ。
全体を俯瞰しながら価値に一直線に進む。一気通貫の仕事が効果的かつ効率的な時代がきたと思う。