構想力の鍛え方

週末に能を観に行った。単なる能ではない。VRと攻殻機動隊と能を組み合わせた全く新しい作品だ。
組み合わせ好きとしては食い付かずにいられない作品だ。VRと攻殻機動隊は既知のもの。
でも、能は恥ずかしながらお面を被るということ以外、殆どの情報を持っていなかった。
職人好きなので、「これを機会に能をしりたい!」とも思い、飛びついた。飛びついてよかった。

作品の構成が素晴らしかった。本編に入る前に、3つの要素の勘所を一つずつ説明してくれた。
VR。仮想的な世界を、あたかも現実世界のように体感できる技術。仮想と現実が入り混じる世界。
攻殻機動隊。人間が電脳によってインターネットに直接アクセス、義体化して人間と交わる世界。
能。今回は夢幻能という曲の構成と進行。演目の中で現実と夢が交差して話が進行する世界。

ふと、気づいた。全く異なる3つの要素に共通点があった。混じる、交わる、交差する。
すうっと、作品に入り込む準備が整った。個々の要素の持つ力がどう支え合うのかにワクワクした。
最初は戸惑った。セリフが入って来ない。VRの仕掛けも気になる。でも少し経つと変わった。
現実の舞と仮想の舞に翻弄されていた。入り混じる世界観に吸い込まれて行った。凄い力だ。

「攻殻機動隊と能を繋ぐVR、あの世とこの世、彼岸と此岸、 虚と実を繋ぐ能楽の未来形である。」
野村萬斎の言葉だ。実際に見て、突飛さは全く感じなかった。今後の進化が待ち遠しくすら感じた。
この世界への入り口は3つあるのも凄い。攻殻機動隊、能、VR。それぞれの世界観がぐうっと広がる。
それぞれのファンが入り混じる。新しい刺激が生まれる。ワクワクが止まらなくなった。

本質的なこと。それを表現する手段は多様だ。そしてその多様な手段は組み合わせで更なる力を発揮する。
人が刺激を受ける価値。今回は「交差する感覚」だが、いろいろな価値を見つめてみたいと感じた。
それぞれの価値はどんな手段で、どんな多様な手段で生み出せるのか。今までにない組み合わせに挑戦したい。
それぞれの手段の奥行きや削ぎ落とした芯のようなものに手触りを持ちながら、構想をつくり、発信したい。