足し算、引き算

この5年くらい、デザインの仕事をされている方と話す機会が多くなった。
デザインの考え方を色々伺う。なんとなく分かるものと、全くわからないものがある。
1つの話に3つくらい分からない単語、専門用語が出ると、大体頭から抜けていく。
一方、シンプルで分かりやすい言葉に象徴される話。これは頭に残りやすい。

引き算をする。今の世の中、工夫に工夫を重ねてきたのか、ゴテゴテしたものが多い。
機能をこれでもかと盛り込んだことで、多機能推しのデザインになっている。
感じるのは、凄い。手にとって馴染むではなく、使って凄いだ。機能美という言葉もある。
でも、多機能のものはその世界観とも異なる。そこで生まれたのがシンプルにする引き算だ。

引き算的な考えで、色々なブランドが美しさや馴染みやすさを謳っている気がする。
確かにそうしたものを手にすると、多機能に慣れすぎていた自分に気づく。
しっくりくる。そして、大事にしたくなる。手触りの質感があるとなおさらだ。
リンゴマークのガジェットが好きなのもその辺りが関係していると思う。

この前、喫茶店で驚いた。足し算に出会った。お水用のグラスだ。
お店の方が運んできてくれた時に、目が止まった。あっ、ん⁈
シンプルな薄めのガラスの真ん中辺りに、ガラスで円周状にクルッと優しい線が入っている。
恐らく、グラスを作った後に、手仕事で溶かしたガラスを一周させたのだと思う。

これは、持った時に落ちないように、、、、と思いつつ持ってみた。
すぐに残念な想像だと分かった。線は持つ場所にはない。美しさのため、記憶に残すためだ。
引き算も足し算も常識からずらして、小さな驚きを作っている。あ、技が増えた気がする。
グラスで体感した気づきを、遠い世界、ものではなくサービスでも応用したいと思った。