都度都度の条件でモノとモノを交換する経済。
稲作農家が街に出掛けて、米を欲しい人を募り、その人に何を交換物として出せるかを尋ねる。
提示されたモノに応じて、それにふさわしいと考える米の量を提示して物々交換を行う。
うまく交換が進むと、街を巡るうちに、次第に大量のお米が自分の必要とする様々なモノに変わってゆく。
物々交換は貨幣経済が無かった頃には唯一の取引方法だった。
その場の出会いが無ければ取引は成立しない。運が取引の成功失敗を大きく左右する。
貨幣ができてからは、モノを一度お金に変えておき、欲しいものが見つかった時に改めて買うことができた。
その時、その場での意思決定が不要になった分、価値に見合った取引が冷静にできるようになったと思う。
その後も、過度なインフレなど貨幣への信頼がなくなった時にも物々交換は行われた。
支払い能力の乏しい企業が、商品で支払ったり、給与を現物で支給するケースも広義の物々交換だ。
その際、交換の対象は、モノだけでなく、労働やノウハウといった無形のサービスの場合もあった。
実際、自動車会社などでは、今でも煩雑な知財の相互利用の際、物々交換を使っている。
デジタル化した現代なら物々交換にはたくさんのメリットがあると思う。マッチングが楽だ。
例えば、お金を使ったという感覚がないのに、欲しいモノやサービスが見つけられ手に入れられる。
一回の取引で2人が新たなモノやサービスを手に入れ、豊かな気持ちになる。
交換を通じて、2人の人、2人の想いをつなぐ。顔の見える取引になる。
物々交換にはモノの移動や人の移動が伴うことが多い。つまり移動コストが掛かる。
なので、物々交換は自然と街という近場で起きやすい。「遠くても欲しい」の比率は低くなる。
使える場所、使える対象を絞った地域通貨。お金とありがとうのメッセージを同時に伝える地域通貨。
地域通貨と物々交換。良いとこどりで街の賑わいを生む道具に仕立ててみたい。