道具立て。

今の世の中で、何か新たに事業を始めようとすると、いろいろな事をやり切る必要がある。
古くは、山で取れたものを里に降りてきて道端で売る事で商売は成り立った。
午後から夜が更ける少し前までが勝負で、売れ残ったら自分で使うのが当たり前だった。
当時から常連さんとの付き合いはもちろんあった。それが商売を安定させていたのだと思う。

今インターネットで通販をやるとしよう。まずもってサイトを作らなくてはならない。
PCもいるし、HPの知識も必要だ。商品を魅力的に見せる写真の撮り方、決済手段もいる。
全部をゼロから自分で作るなど、到底あり得ない。そこですでにあるサービスを組み合わせて使う。
パッケージでひとまとまりになっているものなら、それを持ってくればかなりの機能が揃う。

もちろん、サイトのデザインや顧客サービス、倉庫や物流業務の手配など他にもやることはある。
そうしたものをなんとか取り揃えればようやく事業が始められるのである。結構大変だ。
とはいえ、そうしたパッケージ、道具立てがあるからこそ、色々な人がネット通販を行なっている。
プラットフォーマーと呼ばれる企業が一手にこうしたパッケージを提供しているケースもある。

別の難しさもある。新たな事業ではなく、これまで続けてきた事業を存続させるのが大変なのだ。
競合とのサービス合戦で新たな機能を入れなくてはならない場合、高齢で物理的に難しくなる場合だ。
店主がいまその店の存続に必要とされているさまざまな機能を自らやりきることができないのだ。
こんなときにも道具立ては役に立つ。足りない機能だけを補完して活用していく。

今の世界、道具立てを作り上げてその需要を独占することが競争上の目的になっているように思う。
もちろん、道具立てがあることは有り難いのだが、それを使う事自体が重い負担になる場合もある。
あくまでも足りない機能を、隣人の手を借りるように借りる。そんな状況を生み出せないだろうか。
そうした志のプラットフォーマーを増やしたい。みんなが活躍できる世界をつくれないだろうか。