文化振興とマーケティング

スマホをはじめとしたデジタル技術が発展して、マーケティングは大きく変わった。
必要なデータを溜める仕組みさえ構築すれば、一人一人にあった販促が実現できる。
スマホなら新聞や雑誌ではできなかったリアルタイムでの動機付けも可能だ。
流行りや限定商品など、タイミングが重要なものには特に役立つ仕組みだと思う。

もう一つ大事なことは、ブランディングだ。モノが良ければ売れる時代ではなくなってきた。
顧客は、企業の性格や思想といった、モノやサービスの裏にある背景に興味を持つ。
企業は、顧客との接点を数多く持つが、どの接点でも伝わる背景が一貫していることが大事だ。
そうすることで、顧客は企業の動向がなんとなく分かり、親密な関係になれるのだ。

では文化ではどうだろうか。文化と企業活動との違いはそれなりにあると思う。
企業活動の主体はあくまでも企業だ。顧客参加型も増えているが仕掛けているのは企業だ。
一方、文化は土地の文化であれば、その土地にある共通の価値観だ。特定の人が主体者ではない。
もちろん、価値観を醸成する働きかけはあってしかるべきだが、主役はその土地の人々だ。

企業活動の場合、特にリソースがいる商売の場合は、企業には在庫やキャパシティという制約がある。
よって、前述のリアルタイムの動機付けは極めて大事になる。機会ロスは収益に直結するからだ。
文化振興は、担い手の能動性が必要になる。よって、突発的ではなく地層のような積み重ねがいる。
担い手同士が刺激し合う。担い手がやりたいことが探せる。初心者から上級者までをカバーしたい。

文化振興の働きかけをする者は、あくまでも触媒であって、モノやサービスの提供者ではない。
もう少し踏み込むと、モノやサービスの担い手を応援して、育むことが役割だと思う。
働きかけする者自身も担い手であって構わない。むしろその方が良い時もあると思う。
違いは主体者だ。文化では誰のマーケティングをするか、誰のブランディングをするか、考えたい。