複雑な世界。

人類が生まれてどのくらい経つのだろうか。原始人から数えると相当だ。
最初に生まれた人類がどんなことを考えていたのか、どんな気持ちだったのか。
よく分からないし、想像も極めて難しいが、かなり単純だったように思う。
食べたい、飲みたい、寝たい。こうした基本的な欲求は少なくともあったと思う。

要は、基本的なことが満たされていなかった。それを満たすのに必死だった。
知恵を使い、なんとか安定的に満たす技を身につけていった。徐々にだ。
最初は空腹を満たせればよかったが、次第に美味しいものが欲しくなった。
色々なものを食べてみて、失敗も繰り返しながら、少しずつ探し当てたのだ。

そのうち、素材を加工することも覚えた。保存して後でたべることもできるようになった。
さらに、最初は集落の中に閉じていた知恵が、少しずつ共有されるようになった。
すると、選択肢や技が増え、以前とは比べものにならない程、豊かになっていった。
ただ、人と人が交わると、諍いも起きた。そして諍いをなくす方法も編み出された。

振り返ると、基本的なことから始まり、色々なことができるようになっていく。
そして、その色々なことが当たり前の基本的なことになっていく。普通の範囲が広がる。
生きる上で不可欠なことは、仕事や遊びも含まれるようになり、豊かに生きるが普通となった。
一つのことのバリエーションも膨大に広がった。組み合わせによる新たなことも生まれた。

人類の歴史は、多様化、複雑化の歴史だ。それが普通になる歴史といっても良い。
色々なことが生まれ、それが普通になり、いわゆるベースラインがどんどん上がってきた。
今生きている人は、複雑が当たり前になった後の世界に生きている。更なる複雑化の速さも物凄い。
恐らく複雑なもの全部を掴むことなど不可能だ。チームで対応。これがマストな気がする。