没入。

しずみ入ること。おちいること。「海中に没入する」。没頭すること。こんな意味だ。
知らず知らずのうちに入り込むのと、強い意志で入るの2つの意味があるような気がする。
自分の日常とは異なる世界に迷い込む。そこに引き込まれて我を忘れてしまった。
一つ目はこんな感じだろう。小説の世界ではよくあることだが、実世界であったら凄いと思う。

異なる世界は、ある意味完成度が高くあって欲しい。偽物感があると没入を妨げる。
違和感や不自然さがあっても、クオリティが大事だ。この現実はなんなんだと感じさせる力が欲しい。
そういった意味では、未来よりも過去から脈々と続く世界に魅力があるような気がする。
これまで営まれてきた研鑽の日々は本物であり、見るものを圧倒するパワーを宿している。

今に伝わるこの凄技はこうして引き継がれてきたのか。それもただ引き継がれたのではない。
過去の本質的な部分を高くリスペクトした上で、進化を積み上げている。そこが肝だ。
それには試行錯誤があり、失敗や挫折すらあると思う。それを乗り越えて今があるのだ。
そんな世界が、ほんの一部だけでも目の前で繰り広げられたらなんとも素晴らしいと思う。

修行する姿は目を釘付けにするだろう。常にありえない高度な技が繰り出されている。
それでも本人にとっては、正解ではないようだ。でも、素人には違いすら理解できない。
修行の合間には葛藤があったり、張り詰めた緊張が少し解けた隙があったりする。
そんな姿を見せてくれたら、一気に自分の生き方と重なり、勇気が湧いてくるように思う。

強い意志で没頭している人を見ていると、知らず知らずにその世界に没入してしまう。
まるで二つ目の意味が一つ目の意味を引き寄せているようだ。二つの意味が呼応している。
凄技を持つ人も普通の人間だと分かると、どこかで自分もやってみようと勇気が湧いてくる。
応援するか、自分でやるか。一度没入すると、のめり込みどこまでも続く道があるように思う。