新機軸。

なにか挑戦をしてみたい。そんな気持ちを聞いているととても楽しい気分になる。
どんな伝統の世界の中にも、新機軸を打ち出そうと頑張っている方がいる。
そんな方を見ていると、なんと懐が深いのだろうと感じてしまうことが多々ある。
常に引き出しを増やそうとしている姿勢にはとても感服する。こうありたいと思う。

能の世界でそんな毎日を送っている方を見つけた。22歳で能の宗家を継がれた方だ。
宗家を継いでからの経緯がなんとも凄い。視野を広げる取り組みを積極的に行ってきた。
雑誌の編集、デザイン、制作業務などありとあらゆる事務作業に1年間ほど従事したという。
10年たっても営業に挑戦しているのだ。求道者的な立場だけではダメだと気づいたという。

企業が何を求めているのか、読者に対して何を伝えるかを考えるようになる。
誰のために何をするのかをしっかりと考え、社会の中に入ろうとしているようだ。
驚いたのは、能を観にこられている方の話だ。その方はずっとものを書かれていたという。
要するに舞台を見ていないのだ。興味が湧いてその方に話を聞きにいくのも凄い。

自分はデザイナーで、能については興味がなく舞台もわからないが、ここに来るとアイデアが浮かぶ。
そんな返答だったという。これはまさしく新しい視点だったと思う。新たな観劇のあり方だ。
能を高尚な芸能と考える人は多い。でも、新たな視点を自然と受け止め、広がりに変える。
宗家を継がれたこの方はそんな懐の深さがある。視野を広げることに貪欲なのだと思う。

私自身、ついつい頭が硬くなりがちだが、こういう方をみると、俄然勇気が湧く。
もっと拓いて、色々なものを繋げてこそ、更なる成長が始まる。もちろん、伝統への敬意も大事だ。
宗家というプロがやることの大事さ。宗家だからこそ、素晴らしい挑戦と感じてくれる人がいる。
自分の基軸を持ち、そこに新たな要素を加えて新機軸を作る。色々な形で興していきたいと思う。