多変数の最適化

ものづくりの世界はどんどん複雑になってきた。満たすべき要件が拡大している。
はるか昔は、良いモノを作ることだけが重要だった。つまりクオリティ、品質だ。
モノを量産して販売するなら、作られたすべてのモノで同じ品質を担保することが大事だった。
品質を磨く中で、次第に機能も磨かれ、より付加価値の高いものが作られるようになった。

次に大事になってきたのはコストだ。類似のモノが現れて競争が始まったのが一因だ。
それまでも価格は安い方がもちろん良かったが、コストを突き詰めるという概念は薄かった。
どの材料をどう加工してどう組み立てたら原価が下がるか。原価低減の徹底が始まった。
部品ごとに一円単位の雑巾を絞り続けるような取り組みだ。系列が生まれた要因にもなった。

次に起きたのは、リードタイムだ。つまり、モノを顧客に届けるまでにかかる期間だ。
当たり前だが、これは短い方が良い。材料・部品調達、組み立て、物流。すべてを見直した。
モノが手元に来るのを心待ちにしている顧客に、より早く届けることで付加価値を高めた。
品質、コスト、リードタイム。これら3つを高次元で高める視野の広さが求められたのだ。

次に来たのは、カスタマイズだ。量産された同じモノではなく、自分だけのモノを作る仕掛けだ。
これには、製造ラインや物流において、少量多品種を実現する工夫が必要になる。
まとめて作るということができなくなった。部品の組み替えでカスタマイズを実現することになった。
異なる部品を予め簡単に組み付けられるようにしておく工夫、モジュール化が進むことになった。

その後は、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーなど地球にやさしいものづくりがきた。
人が地球で生きていく以上、当たり前に満たすべき要件だ。ものづくりの要件はまだまだある。
これら全てに目を配り、それぞれを高次元に高める必要がある。目を配ることすら大変だ。
でも、いまならデジタルの力が借りられる。デジタルの目で整理したものを意思決定に活用したい。