先を見通す。

昨日から棟梁の指南の下、オフィスのリノベーションを行っている。
当たり前だが、作業を進めるにあたって、最も大事なことは出来上がりをイメージすることだ。
形はだいたいイメージできる。一方、それをどんな構造で実現するかはなかなか分からない。
昨日作ったものは、小上がりの二畳の間の土台、キャットウォーク、吊り下げ棚の部品だ。

小上がりの土台は、ある程度構造と作り方のプロセスを見通すことができた。
これまで丹波篠山で作ってきたタイニーハウスの経験が活きた。水平の作り方もわかる。
キャットウォークは、ほぼわからなかった。用意された台形の木材の意味が分からない。
出来上がりを見て分かった。下から見上げた時に上がよく見える工夫だ。美しさが一段上がる。

まさか、形だけでなく、光の通り方までイメージがあったとは・・・。1つ視野が広がった。
あと、かなり地味な話だが、ノコギリで台形の木材を垂直に切るのは意外と難しかった。
いちばん分からなかったのは、吊り下げ棚だ。そもそも棚を吊り下げるという感覚がなかった。
2cm角くらいの弱々しい柱を6本、薄めの棚板8枚を棟梁が空中で繋いでいく。難易度の高い作業だ。

なんとも頼りげない棚だったが、「吊り下げる」を思い出すと、軽さを極めているのだと感じる。
その一方で、結構な量を棚に収めていくのに大丈夫だろうかと、頭が混乱してくる。
棟梁の頭の中には、収納するものの重さを支え、かつ吊り下げられる軽さが両立しているのだ。
壁にある丸太への吊り下げ方までイメージがあるはずだ。今日どのタイミングで分かるかが楽しみだ。

話は変わるが、日経である記事を読んだ。退職届を書き、入社式で読み上げるという話だ。
退職届には、退職理由を書くことになっている。そこには自分の夢を描くのだというものだ。
新入社員も会社も、その夢を見通しながら共存共栄を進めていくことができると思う。
木工の造作と入社式での退職届。粒度は違うが、何か同じ感じもする。さあ、「見通す」を楽しもう。