車を愛でる文化。

最近、懐かしくてたまらない車がある。リトラクタブル・ヘッドランプのついた車だ。
今はほとんど見なくなったがた、初代のユーノスロードスター(マツダ)がそうだった。
イニシャルDという漫画の主役の車であるトヨタのスプリンタートレノもそうだ。
ランボルギーニやフェラーリ、ロータスといった憧れのスーパーカーにも付いていた。

ドライバーがライトオンの操作をすると、「パカッ」とライトが開き、光るのだ。
自分の意思で動かせるのはもちろん、その動きが車好きの心を強く惹きつけたものだ。
止まってる時に意味もないのに開け閉めして自慢をする。こんなシーンも当たり前だった。
リアスポイラーの角度を動かすことができる車もあったが、「リトラ」の動作が人気だった。

寂しいことに、ある時からパタっと「リトラ」を装備した車が開発されなくなった。
「リトラ」だった車もマイナーチェンジをして、固定式のライトに変更されていった。
衝突時の安全確保の難しさやコスト増、空力特性の悪化など合理的な理由があったようだ。
おそらくこれからも「リトラ」のついた新たなモデルが出てくることはないと思う。

これからの車はランプの概念も完全に変わるだろう。いわゆる電球はなくなりLEDになる。
とても小さく、奥行きもないランプのなるので、スペース効率は高まり、デザインの自由度も上がる。
内外装には多様なディスプレーが付き、車全体で車内外とのコミュニケーションを図るようになる。
ソフトウェアで機能の入れ替えや追加は自由自在になる。圧倒的に便利になるのだと思う。

これまでは移動や自慢の道具であったが、今後はなんでもできる便利な道具になっていくように思う。
場合によっては、所有するものではなくなり、不特定多数が利用するものになるかもしれない。
でも、やはり寂しい。車を愛でるという昭和の車文化を後世にも繋いでいきたいと思う。
ニッチな文化になるかもしれないが、例えば「リトラ」などを象徴に、愛でる文化を育みたいと思う。