補助金の審査

この10年、様々なテーマでの補助金の審査に携わることができた。有難いことだ。
テーマは、AI、ロボット、IoT、センサー、モビリティ、発電、工作機械など広範囲に亘る。
技術的にとても興味をそそるもの、ビジネスとして自分でやりたくなるものまであった。
申請者は、20代から70代くらいだろうか。産官学が混じり合っている感じだ。

スタートアップも多い。身の回りの社会課題を捉えて、その解消に工夫を凝らしている。
ハードウェアが必要なケースも多いが、ものづくり企業と連携して事業を進めている。
匠の技術をもったものづくり企業が主役のケースも多い。突き詰めてきた技術の伝承だ。
AIやセンサーなどで匠の頭の中や視覚や触覚を見える化して、再現しようとする試みだ。

プラットフォームを作ろうとする取り組みも多い。バラバラな活動での重複を無くしたいのだ。
インターフェースなどを標準化して、参加者間で機能モジュールやデータの流通を促進させる。
一点突破で世界最高の機能を目指すケースも多い。これはなかなかマニアックで理解するのが大変だ。
でも、奥行きを理解し始めると、途端に応援したくなる。どう世に出すかを考えたくなる。

ここ数年は、どんなテーマにおいても社会実装までの計画が求められるようになっている。
顧客はだれで、どんな価値を提供して、どんな形でお金を頂くか。いわゆる事業計画だ。
その中にはもちろん、どんな体制で、いつまでに何をやりとげるかのマイルストーンが必要だ。
さらに、それに必要なお金の手当てや知財の確保なども重要な審査ポイントとなる。

補助金が通るには色々な要件が定められている。それらの要件を満たせるかで審査をしがちだ。
でも、少しだけわがままを言うと、もっと志や社会への想いを大事にしてもいいと思う。
申請者の描いている未来社会の姿を実現したいか、申請者が実現への熱意にあふれているか。
審査員が、どんと構えて「やってみい」と背中を押す。こんな審査もあったらワクワクすると思う。