密度を上げる

ある場所に「もったいない美術館」があったとしよう。初めにやるべきことはなんだろうか。
間違いなくその美術館を知ることだ。美術館の展示物に加えて、そもそもの存在意義を捉えることだ。
どんなコンセプトを世に問いたいのか。訪ねてきた人々にどんな気持ちになって欲しいのか。
これらを自分なりの解釈として持つことが大事だと思う。そして、美術館の方々に問いかける。

ここはどんな美術館ですか?すぐに、一通り由来や沿革、そして展示物の話をしてくれると思う。
続けて、「ここに訪ねてきて、お庭や建物や展示物をみてこんな感じを受けました」と話してみる。
これは、想定通りの答えかもしれないし、意外な答えかもしれない。しっかりと反応を見る。
おそらく、提供側の想いと需要側の感じ方は異なると思う。だからその違いを捉え整えていく。

どんな施設でもその施設の目的や存在意義がある。その目的をいかに高次元で実現するかが重要だ。
故に、改めて真の目的や存在意義をしっかりと議論して、見える化、文章化していく。大事な作業だ。
次に、いまその目的に適っているものを洗い出す。逆に、目的に適っていないものも洗い出す。
適っていないものは、見せ方や使い方を変えることで目的に沿うようにしていく。上手く使うのだ。

どうしても目的に反するものは、使わないという意思決定がいる。さもないと不協和音が生まれる。
施設の外観、内部の雰囲気、トイレ等の設備、展示物など目に入るモノ全てを目的に合わせていく。
それでも目的が極まらない場合は、新たなモノを持ち込む必要がある。今あるモノに足して増幅する。
方向性のあったものの密度を上げることで、訪ねたい意欲をたくさんの人に生み出していくのだ。

ここまでの議論は施設に閉じていた。でも、その施設に訪れてもらうにはその場所に来る必要がある。
そうなると、周辺の施設や自然や文化との相乗効果が必要となる。地域の魅力を高めるのだ。
その地域に訪ねてきた人に何を感じて欲しいか、その地域にあるモノ全てで何を伝えるかが大事だ。
ここでも目的や存在意義を束ねて密度を上げるのが有効だ。人はその密度に惹かれやってくると思う。